こんにちは、アジアン乗り鉄ティンギーです。
新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大に伴う在宅ワークが早くも1か月経過しました。
私の会社は教育機関に分類されるため、早い段階で閉鎖指示が出されていました。
オフィスに勤める在留邦人も、かなりの割合で在宅勤務ないしは隔日出勤に切り替わっていることと思います。
そんな中、4月10日には事実上の非常事態制限とも言える
「大規模な社会的制限」(PSBB)
をジャカルタ特別州が施行しました。
ジョコウィ大統領は都市封鎖(ロックダウン)は実施しないと強調しているものの、ジャカルタ都心部のオフィスは閉鎖された会社が多く下町エリアではいまだに多くの人が働いています。
結果的に4月中旬でジャカルタの新型コロナウイルス感染者は6000人目前に迫るなど、大きな効果を上げられていないのが現状です。
ジャカルタ市内の現在の様子はこちらの動画で紹介しているのででご確認ください!
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今回は<コロナウイルス・インドネシア最新情報>「大規模な社会的制限」(PSBB)の意味・期間・対象地域、そして都市封鎖(ロックダウン)との違い・規制内容・罰則など暴動の可能性なども交えて検証していきます。
Contents
ジャカルタ「大規模な社会的制限」(PSBB)までの経緯
3月15日のジョコウィ大統領の声明を受けジャカルタ特別州のアニス知事は、
- 不要不急の外出を控えること
- ソーシャルディスタンスの実施
を市民に求めました。
この時点では市民生活は平時と変わらず多くの企業も通常どおりの営業でした。
唯一閉鎖されたのが学校などの教育機関で、現在はオンライン授業が中心です。
小中高の統一卒業検定試験も中止になりました。
わずか5日後にアニス知事は「新型コロナウイルス感染災害緊急対応のフェーズ」を発表し、より一層の外出・企業活動の自粛を求めました。
これでようやくオフィスを閉じる企業なども出てきて、一部の飲食店は持ち帰り専用になりました。
しかし自粛要請に過ぎなかったので、3月上旬で2名だった感染者数は3月末には3000人まで増えました。
アニス知事は中央政府に対し都市封鎖を要請しましたが、ジョコウィ大統領に一蹴されたという経緯もあります。
このような状況の中、
感染者数の異常な伸びを受けて
4月10日から「大規模な社会的制限」の実施
がようやく承認されたのです。
しかし、強制力はある程度あるものの都市封鎖ではないため、肌感覚では「新型コロナウイルス感染災害緊急対応のフェーズ」とあまり変わらないのが現状です。
外出自体も規制対象になっておらず、取り締まりも現時点ではありません。
電車、バスも引き続き運行されていて郊外から多く人々がジャカルタ中心部へ通勤しています。
「大規模な社会的制限」(PSBB)の規制内容
大規模な社会的制限とは何なのか、もう少し詳しく見てみましょう。
内容はざっと以下の通りです。
- 外出時のマスク着用の義務
- オフィスでの就労禁止
- 飲食店は持ち帰り専用とする、営業時間を制限する
- 自家用車は定員の半分以下での利用、かつマスク着用に限る
- バイクタクシー(ゴジェック、グラブ含む)の営業は禁止する ※ただし、飲食物など物品の輸送サービスは継続できる
実際に生活して大きく変わったと思うのは3と5です。
出先で、休憩やランチを取れないのはかなり痛いです。
バイクタクシーのサービスが停止されたので気軽に外出できなくなっています。
最寄りのバス停、駅まで歩けば良いのですが….
ただ、グラブやゴジェックの自動車の配車サービスは引き続き利用できるし、タクシーも平常営業です。
さらには、バジャイやアンコタといった昔ながらの市内交通も規制の対象になっていません。
つまり、
いくらでも抜け道はあるかなり緩い規制内容なんです。
インドネシアらしいといえば、らしいのですが…
ゴジェックが生まれる前のジャカルタに戻ったとも言えるでしょう。
ゴジェック(GOJEK)の使い方や予約方法は?インドネシアでのアプリ登録方法を解説!
自家用車に乗るときはソーシャルディスタンスを保つため助手席を空けなければなりません。
また、オフィスでの就労禁止もどの業種が禁止なのかわかりにくく市民から不安の声が上がっています。
国営企業・公営会社・役所・大使館など公的機関とこれらの業種は就労制限の対象外です。
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保健衛生・食料・食品・飲料・エネルギー・通信・情報技術・金融・物流・ホテル・建設・戦略産業・基礎的サービス・公共便益に関する分野等・生活必需品
こうしてみると就労制限になる職種の方が少ないのでは?と思うのはわたしだけでしょうか。
- 床屋は公共便益に含まれる?
- 携帯電話ショップは生活必需品に含まれるの?
- バイクの修理やパーツを扱うベンケルはどう?
など疑問が次々と浮かんできます。
お店の人に話を聞くと、政府からの明確な指示がなくて困っていると言っていました。
「大規模な社会的制限」が実施された最初の週末は高級モールを除いてほぼ平常通り営業していました。
しかし、その後一部のモールで役人のチェックが入りペナルティを課されるお店がでてきたので、翌週末はほとんどのモールは食品、飲食店舗以外は休業になっています。
しかし、街中の個人経営のワルン(食堂)や屋台はいつも通り営業しており、店内で食べても問題ないなど「大規模な社会的制限」の運用は非常に曖昧な部分があるのが実態です。
【インドネシア屋台飯③】サテのお店の場所と行き方は?ジャカルタでおすすめのサテの種類と値段・頼み方を解説!
「大規模な社会的制限」(PSBB)の罰則
ところで気になるのは違反者への処罰です。
外を歩くだけで逮捕されてはシャレになりませんからね~
先に言ってしまうと現在のところはそこまで怖がる必要はありません。
警察や軍による道路上での検問や駅で行き先や職業を確認されたりすることは、今のところありません。
夜20時以降に営業しているレストランや就労制限のある店舗や会社への立ち入り検査が行われているくらいです。
立ち入り検査で罰則が適用された場合は、
最大で1年の禁固刑又は最大1億ルピアの罰金
が科されるとされていますがどこまで適用されるかは未知数です。
巷では、悪質な違反に対しては会社の営業許可がはく奪される可能性もあるとも言われています。
都市封鎖(ロックダウン)とPSBBの違いと暴動の可能性
都市封鎖とは、その名の通り都市をまるごと封鎖して他都市との往来を完全にシャットダウンすることです。
さらには外出禁止も厳しく制限されることが通例です。
- マレーシアのクアラルンプール
- フィリンピンのマニラ
で実施されているのが都市封鎖です。
フィリピンのドゥテルテ大統領は「外出したら射殺」と強硬姿勢ですし、クアラルンプールでも家の前を散歩しただけで逮捕されたという事例が伝えられています。
幸いなことに現時点ではこのような制限のキツイ規制をインドネシアは実施していませんし、夜間外出すら禁止されていません。
どうしてでしょうか?
まず第一にジャカルタの通勤圏が日本と同じように周辺市にまで広がっていて、都市封鎖を行えば、
- ボゴール
- デポック
- ブカシ
- タンゲラン
といった周辺都市の居住者すべてに影響が及ぶからです。
複数の行政区域があるジャボデタベック圏全域での都市封鎖が早期に実施できなかったことが、現在の新型コロナウイルス感染拡大に繋がっているとも言えます。
もう一つの理由は、ジョコウィ大統領が都市封鎖に消極的であることです。
3月上旬時点でジョコウィ大統領は新型コロナウイルス感染防止対策は地方行政にまかせると発表しました。
しかし、アニスジャカルタ特別州知事を始めとした地方首長たちが都市封鎖の必要性を訴えると、ジョコウィ大統領はその態度を一変させ国の許可なしでの都市封鎖は行わせないと言い放ちました。
都市封鎖を行った場合は多くの人々の収入が減少し、失業率が急上昇するおそれがあります。
気がかりなことは、都市封鎖を行った場合の補償として予算を確保しなければならないだけでなく、失業中の多数の市民が暴動を起こす可能性があることです。
他にも、新型コロナウイルス問題の政治的利用もあるのではないかと言われています。
かねてから、ジョコウィ大統領とアニス知事は犬猿の仲なので。
新型コロナウイルスの感染の大半はジャカルタ特別州で発生しているので、都市封鎖は許可しないものの対策・責任はジャカルタなど地方行政にあるという姿勢をジョコウィ大統領は崩していません。
つまり、
ジョコウィ大統領は新型コロナウイルスの感染拡大によってアニス知事の引責辞任を狙っている可能性が考えられます。
国は決定的な感染防止策を打ち出していないのはこのためなのかもしれません。
ジャカルタ特別州傘下のMRTを始めとした公共交通機関は大幅に本数を減らしているものの、国の傘下の通勤鉄道は周辺都市からの通勤客を運び続けています。
このような政治的な事情がからみあい都市封鎖ができなくなり感染者数の拡大を助長しているのです。
まだ職を失っい困窮している市民が少ないので暴動を起こす可能性は今のところ低いとは言えますが。
とはいえ、実質休業状態のお店も多く、市民の懐事情にじわじわと影響がでてくるのは間違いないでしょう。
このコロナ・パンデミックの収束が長引けば、市民の不満も溜まりそれらを躍動する反政府系の団体も出てくるので、長期的に見るとジャカルタで暴動が発生する可能性は十分あると言えるでしょう。
「大規模な社会的制限」(PSBB)の期間と延長の可能性
ジャカルタ特別州の「大規模な社会的制限」は4月10日から施行され、2週間の期日付きですが状況次第で延長が可能とされています。
現在、新型コロナウイルス感染者は収まるどころか拡大の一方なので、高い可能性でさらに2週間、また2週間と伸びることが予想されます。
2020年のラマダン(断食月)は4月下旬から5月中旬までです。
さらに、その後のレバラン(帰省休暇)があることを考えると、少なくともレバランが終わるまでは「大規模な社会的制限」は続くと予想されます。
できることなら、規制を強化して早期解決を願いたいところですが、このような緩い規制では1か月以内の収束は難しいでしょうね。
「大規模な社会的制限」(PSBB)の対象地域とジャボデタベック(JABODETABEK)拡大の可能性
4月10日から施行された「大規模な社会的制限」はジャカルタ特別州内に限られ、ジャボデタベック圏全域での統一規制ではありません。
しかし、感染者数の急激な拡大を受けて周辺各都市も追随するように同様の制限を開始しています。
まずは西ジャワ州に属するボゴール、デポック、ブカシの各自治体が
4月15日
から「大規模な社会的制限」を施行しています。
さらに、バンテン州に属するタンゲラン、南タンゲラン(スルポン)の各自治体も
4月18日
から同じく施行しています。
これで、ジャボデタベック圏の足並みが揃いました。
が、通勤鉄道など交通機関の全面的制限など強い規制を各首長が国に申し入れていますが、いずれも一蹴されています。
ジャカルタ首都圏全域での都市封鎖の準備ができたにも関わらず、新型コロナウイルス問題に真剣に取り組まない国の姿勢に地方自治体から批判の声が出ています。
このような状況の中、住民が自主的に周辺エリアの封鎖を勝手にやったりして事態は混迷を極めています。
こうした封鎖エリアでは、個人の商店が通常どおり営業していたり、マスクも付けていなかったりと無法地帯です。
まとめ
今回はジャカルタの「大規模な社会的制限」(PSBB)の規制内容を中心に見てきました。
フィリピンやマレーシアなど周辺諸国のような強い都市封鎖のかわりに発動された「大規模な社会的制限」。
庶民の怒りを回避するため様々な抜け道が用意されている弱腰な規制では、感染者数を封じ込めることは難しいのではないでしょうか。
4月末で感染者が1万人を超えれば、国としてもいよいよ無視できない問題となります。
朝令暮改で目まぐるしく変わるインドネシアの政策なので、「大規模な社会的制限」の名前そのままで外出者への取り締まりが実施されたり制限内容が強化されたりする可能性もあります。
ジャカルタエリアの在住者は、現地報道を始めとした最新の情報に注意して動かず騒がずで情勢の推移を見守るのが一番でしょう。
ジャカルタ市内の現在の様子はこちらの動画で紹介しているのででご確認ください!
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