Selamat siang(こんにちは)

ジャカルタ在住のクーチンです。

インドネシアにはかれこれ15年暮らしてます。

インドネシアの首都がジャカルタからボルネオ島東部に移転することが決まり、インドネシアの首都移転計画は日本でも注目されていますね。

元新聞記者のわたしも日本のテレビ局からツイッター経由で取材を受けました。

ところで、なぜ今さら長年親しまれてきたジャカルタから首都を移転しなければならないのでしょうか。

移転先はどんな場所で、移転によりどんなメリット、デメリットがあるのでしょう。

今回は、インドネシア首都移転の理由と時期はいつなのか、そして首都移転候補地ボルネオ島(カリマンタン)の問題点と影響を検証していきます。

インドネシアの首都移転の理由はなぜ?

インドネシアの現在の首都はジャワ島の西部にあるジャカルタです。

古くはスンダ・クラパと呼ばれた港町でオランダの植民地支配や日本の軍政の中心になり、スカルノが独立宣言を読み上げた歴史ある街です。

そのジャカルタは今、世界屈指の人口過密状態が原因でさまざまな問題が生じています。

現在のジャカルタの人口は約1000万人。

ジャボデタベックと呼ばれる周辺地域も含めると3000万人もが住んでいます。

ジャカルタは東京首都圏についで世界で2番目に人口の多いエリアですが、人口はまだまだ増加中で2030年には世界一になると予想されています。

なので、

「人口過密による都市問題」

が首都移転の最大の理由と言えるでしょう。

ジャカルタを一度でも訪れたことがある人はここの渋滞のひどさを知るはずです。

通勤時間・帰宅時間などのラッシュアワーは、わずかな距離の移動でも1時間、2時間は当たり前です。

日本の技術協力で2019年に開業したジャカルタMRTなど公共交通機関の整備は進んでいるものの、自動車の増加にまだまだ追いついていません。

ジャカルタMRTの記事はこちら

ジャカルタ地下鉄(MRT)の乗り方と現在の評判は?路線図・運賃・時刻表を乗り鉄が解説! 

また、渋滞による経済損失は年間100兆ルピア(7700億円)に達し、自動車の増加は世界最悪レベルの大気汚染の一因でもあります。

大気汚染は健康に直接影響するので、在留邦人の間でも不安の声があがっています。

その他にも、地下水の汲み上げすぎによる地盤沈下も大きな問題です。

コタやクラパガディンなどの北ジャカルタ海岸エリアでは、毎年10センチ以上地盤が沈下しているようです。

地球温暖化の影響でこのまま海水面の上昇が続けば、北ジャカルタは10年後には水没している可能性も高まっています。

2050年には中央ジャカルタも水浸しの可能性が高いのも首都移転の大きな理由の一つというわけです。

オフィスビルの地下水の利用状況を抜き打ちで検査したり、日本やオランダと協力して防潮堤を作ったりと地盤沈下対策はすすんでいます。

しかし、水道会社PAMが供給する生活用水が需要をカバーできてないという根本原因が解消されないかぎり、違法な地下水利用はなくならないでしょう。

ジャカルタの都市問題を別の視点から見ると、発展の不均衡という問題もあります。

人口も経済活動ジャワ島に集中し、それ以外の地域の発展が遅れているのです。

ジョコ・ウィドド大統領は政権発足当初からジャワ島外の開発促進を掲げていました。

首都移転は移転先のボルネオ島開発の起爆剤という面もあるようです。

インドネシア首都移転の時期はいつ?

ところで、インドネシアの首都移転はいつごろ実現するのでしょうか?

2019年8月17日独立記念日を前にジョコ大統領が行った年次教書演説によると、再来年の2021年には新首都の建設を開始するそうです。

そして、2024年から段階的な政府機能の移転が始まります。

かなりのハイペースですが、移転開始の2024年はジョコ大統領の任期の最終年です。

大統領が代わって計画が中止されないように任期中に計画を実施段階までもっていきたいのが彼の本音でしょうね。

急ぎすぎて計画が雑にならなければいいいのですが…ちょっと心配です。

最終的な移転完了時期は独立100周年記念日の2045年です。

首都移転候補地(ボルネオ島)の場所は?

ところで、今回の首都移転計画の移転先はどんな場所なのでしょうか。

すこしわかりにくいのですが、

東カリマンタン州のプナジャム・パセル・ウタラ県北部分とクタイ・カルタヌガラ県の一部を合わせた地域

です。

なぜ、この場所なのか、その理由は

  • インドネシアの中心に当たる地点
  • 洪水、地震、津波、森林火災、火山噴火、地滑りなどの災害リスクが少ない
  • 18万ヘクタールの政府所有の土地があり、土地収用が容易
  • 州都サマリンダとバリックパパンに近く、インフラが整っている

からです。

ジャワ島から1000キロも離れたボルネオ島に新首都が建設されるのは驚きではありますが、新時代のインドネシアの首都にふさわしい面もありそうです。

インドネシア首都移転の費用・影響・問題点は?

こうして見ると、いい事ずくめのように感じる首都移転計画ですが問題点も少なくありません。

インドネシア首都移転の費用

何より

466兆ルピア(約3兆5000億円)

という莫大な費用がかかります。

このうち国家予算から拠出されるのは19%で、残りはPPP(官民連携)や投資を募るそうです。

どちらにしても、インドネシア史上例のない規模の首都移転になるでしょう。

インドネシア首都移転の問題点

また、環境保護団体からは野生のオランウータンが生息する森林地帯を破壊すると首都移転に反発する声も出ています。

インドネシア政府も環境に優しいスマートシティを目指す方針を示していて、若い世代を中心に環境意識が高まっているので無視はできません。

首都移転の最大の問題は国民の関心の低さかです。

インドネシア在住15年の私も、今回の首都移転計画のニュースを始めて聞いたときは「またか」としか感じませんでした。

首都移転は初代大統領スカルノの時代から、浮かんでは消えてを繰り返す政治課題です。

ジョコ大統領はやる気満々ですが国民の関心がなければ、大統領が代わった途端にストップする可能性もあります。

先日、政府は新首都のデザインコンテスト(最優秀賞は賞金20億ルピア)を行うと発表しましたが、これから国民の関心を高めるためのイベントが続きそうですね。

インドネシア首都移転の影響は?

ところで、首都移転が実現したらどのような影響が生じるでしょう。

バンバン・ブロジョヌゴロ国家開発計画相は、新首都の人口は公務員や軍・警察の関係者、家族を中心に150万人を想定しています。

カリマンタンの新首都は政治の中心となり、経済面の中心はジャカルタのままになるそうです。

実質的には二都構想ですね。

大使館や国際援助機関の関係者は新首都に移住せざるを得ませんが、外国人ビジネスマンの勤務地はひきつづきジャカルタになりそうです。

今、インドネシアに住んでいる人も、これからインドネシアに移住を考えている人も仕事をするのはジャカルタという状況に変わりはないでしょう。

反面、ジャカルタ勤務の国家公務員はカリマンタンへの引っ越しを本気で嫌がっています。

首都が移転すれば、インドネシアの国のあり方やインドネシア人の意識に大きな変化が起きでしょうね。

これまで政治でも、経済でも、文化でもインドネシアの中心はジャワ島でした。

インドネシアの首都がジャワ島からボルネオ島に移転すれば、ジャワ島中心主義が薄れていくかもしれませんね。

こうして、多様な民族が対等な関係で共栄するインドネシアの理想に一歩近づけるのは良いことだと思います。

まとめ

いかがでしたか。

今回は、インドネシア首都移転の理由と時期、そして首都移転候補地ボルネオ島(カリマンタン)の問題点と影響など在住者の目線で見てきました。

はじめは「寝耳に水」で驚かされたインドネシアの首都移転構想も、いろいろメリットがあることがわかってきました。

これから計画通りに進まないことや問題もいろいろ出てくるでしょうが、インドネシアのさらなる発展のために首都移転が順調に進むことを願っています。

Sampai jumpa lagi.(ではまた)