こんにちは、アジアン乗り鉄ティンギです。

ジャカルタでは9月14日から大規模な社会制限(PSBB)が再強化されています。

6月からPSBBを継続しつつも徐々に制限を緩和してニューノーマルに移行しつつあった中ですが、新型コロナウイルス感染者は減るどころか増え続けています。

このことから、緩和を撤廃して4月のPSBB開始当初の状況に戻すというのが今回のPSBB再強化の狙いです。

しかし、国をあげて経済活動の再開に舵を切る中、ジャカルタのPSBB再強化には様々な声が上がっており、果たしてどの程度効果が出るのかは未知数となっています。

9月22日にはインドネシア全土の新規感染者は4000人を超えており、ジャカルタのみが規制強化しても歯止めのかからない状況です。

今回は、

インドネシアのコロナウイルス感染状況(2020年9月現在)をPSBB規制強化に揺れるジャカルタの街でローカルバスの車窓から検証します。

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4月時点のPSBB内容

まずはじめに、4月のPSBBの内容をおさらいしておきましょう。

簡単にまとめると以下の通りです。

  • 外出時のマスク着用の義務
  • オフィス・工場等での就労禁止(但し特定11業種を除く)
  • 飲食店は持ち帰り専用とする、営業時間を制限する
  • 自家用車は定員の半分以下での利用、かつマスク着用に限る
  • バイクタクシー(ゴジェック、グラブ含む)の営業は禁止する ※ただし、飲食物など物品の輸送サービスは継続できる
  • 電車・バスの運行時間帯の短縮、乗車定員は6割まで
  • 集団礼拝の禁止
  • 映画館、カラオケ等の娯楽施設、ラグナンやアンチョールなどのレジャー施設、博物館の閉鎖

会社での就労禁止については除外業種が11業種もあるので、引き続き多くの人々がジャカルタに通勤しています。

11業種とは、飲食料品、生活必需品、金融、物流、ホテル、建設業など生活に欠かせない業種で、パサールやスーパーマーケット、街中のワルンも閉まることはありませんでした。

一方で高級モールは閉鎖されましたが、混雑するパサールなどが感染要因になっていたことは否めません。

電車・バスの運行についても大規模な減便を行ったジャカルタの州営交通と平常運行を続けた国営交通というように各社で対応が分かれるなど、このPSBBの効果には大きな疑問符が付きました。

しかし、感染者数が増え続けるなか6月には規制緩和に踏み切っています。

PSBB再強化の内容は?

ジャカルタ特別州のアニス知事は、PSBB再強化を前に、4月時点の水準に引き締めると会見で発言していました。

しかしながら、国や業界などからの反発もあり再強化とは言いながらかなり緩い内容になっています。

9月14日からの主な規制内容は以下の通りです。

  1. 外出時のマスク着用の義務
  2. オフィス・工場等での就労は25%以下の出社率で可
  3. 飲食店は持ち帰り専用とする、営業時間を制限する
  4. 自家用車は1列2名まで乗車可、かつマスク着用
  5. 電車・バスの運行時間帯の短縮、乗車定員は6割まで
  6. 映画館、カラオケ等の娯楽施設、ラグナンやアンチョールなどのレジャー施設、博物館の閉鎖

マスク着用はともかく、注目されていた就労制限は出社人数の制限こそあるものの解禁されました。(ただし多くの企業で守っていない様子)。

さらに前回禁止されていたモール営業も許可されています。

レジャー施設や博物館が再度閉鎖になっているものの、日常生活に大きく関わる部分としては③の飲食店での店内飲食が再び禁止になったことくらいが変化点でしょうか。

⑤の電車・バスについては、前回大幅な路線縮小や本数減が実施されたトランスジャカルタとMRTも、今回は8月までの規制緩和期間中の運行本数を確保しています。

つまり、PSBB再強化と名前ばかりで、実態が何も伴っていないというのが正直なところです。

結局前回のPSBBをもってしても感染者を抑えることは出来なかったわけで、それよりもさらに弱い規制では、前回の反省が何も活かされていないと言えるでしょう。

もっとも、ジャカルタ特別州としてはより強い規制をしたいのは山々ですが、国がこれ以上の規制を容認しないため、やらないよりはマシという苦肉の策なのです。

2020年9月ジャカルタの街の様子

そんなわけでジャカルタの街の様子も8月時点とほとんど変わりません。

動画は規制再強化直後の9月14日の週に収録しています。

しかし、9月14日の週は人の出がやや少ないかなとは思ったものの、次の週からは電車の混雑も道路の渋滞も元に戻っています。

昨日は朝の駅に乗車待ちの列が出来ていました。

パサールも普段通りの賑わいで、市民感覚にPSBBという概念はすでに無く通常通りの生活を送っています。

今回こそ軍や警察がジャカルタ特別州に協力するはずと思っていましたが、これまで以上に非協力的で、不要不急の外出者やプロトコール違反の取り締まりもほとんど行われていません。

4月時点は線路際で電車の撮影をしていると、何度か見回りに見つかって声をかけられましたが今回はパトロールすら回ってきていません。

唯一実施されているのがマスク未着用者に対してのチェックです。

しかし、各州のPSBBではマスク着用を義務付けているものの、国はあくまでも「付けましょう」という曖昧なスタンスなので強く取り締まれないのが実態です。

違反者に対して

  • 「棺桶に入れた」
  • 「腕立て伏せをさせた」

などセンセーショナルな記事も書かれています。

しかし、これはあくまでも見せしめとしてその場限りのイベント的に実施されており、実際の取り締まりではありません。

ジャカルタ周辺のバンテン、西ジャワ州の動向が注目されていますが、現時点では再強化は実施しない方針であり、ジャカルタ特別州のみ空回りしてなし崩し的に規制緩和に進んでいます。

まとめ

9月下旬現在、インドネシアの新型コロナウイルス感染者数は25万人を超えています。

もはや、ジャカルタ特別州がどうこうしたところで収拾のつかない事態であることは変わらないし、コロナウイルスが政争の道具にされていることが最大の問題です。

次の大統領選に立候補すると言われているジャカルタのアニス知事をコロナに乗じて潰そうとする動きが顕著に見えています。

インドネシアの政治研究者の間ではすでに指摘されているところですが、これこそが国と地方のチグハグなコロナ対応の最大の要因です。

8月になって、ようやくジョコウィ知事は国民の前でマスクを付けましょうと発表したものの、「Ayo Pakai Maskar」と言う弱いニュアンスで、決して「Wajib Pakai Maskar」とは言いません。

もはや、すべてを中国製ワクチンに丸投げしていると言われても仕方のないことでしょう。

ワクチンの完成までインドネシアのコロナウイルス感染者は伸び続けることが予想されます。